「……――待って、お母さん!!」
あたしは自分でも信じられないくらいの声で、出て行こうとするお母さんを呼び止めていた。
呼び止めるつもりなんてなかったのに。
それなのに……――。
「里桜……?指が痛むの?」
「うん……。ちょっと切れただけなのに……痛いの……。すっごく……痛い。お母さん、どうしよう……。痛くてたまらないの……」
抑えていた涙がぽろぽろと流れる。
あたかも指が痛いかのように、指先を抑えながらそう答える。
本当は指先じゃない。
胸が痛くて、苦しくてたまらない。
助けて。そう叫びたい。
助けて。気付いて。手を差し伸べて。
心の中でそう叫ぶ。



