「うぅうっ……」
ボロボロと涙が流れ、床にぺたりと座り込む。
そして、床に散らばったガラスの破片をひとつづつ拾い集めた。
『里桜も16歳になったんだな。少し早いかもしれないけど、彼氏ができてデートにでも行くときにつけなさい』
お父さんが16歳のあたしの誕生日にくれた香水。
その香水は、お父さんのいる部署で開発された初めての商品で、思い入れも強いと話していた。
『お父さんってば、里桜に彼氏ができてもさびしくないの?ほら、よく言うじゃない。自分の娘に彼氏ができたら父親はショックだって』
お母さんがそう尋ねると、お父さんは笑顔で首を振った。
『ショックなもんか。里桜が誰かに愛してもらえるなんて幸せなことだろう』
『あらっ。お父さんったらそんなクサいセリフをサラッというなんて。里桜もそう思わない?』
『本当だね~!!お父さん、恥ずかしいからやめてよね!』
その時までは信じていた。
この先に待つ明るい未来を。
だけど、今のあたしに……
明るい未来は見えない。



