息ができないほど苦しい。
目の前がかすんで、喉の奥から感情がせりあがってくる。
美奈子は部屋の扉に手をかける直前、部屋の隅にあった香水を手で払いのけた。
香水はそのまま床にぶつかりガシャンっという音を立てて割れた。
中身が飛び散り、部屋の中に甘い香水の匂いが広がる。
「あぁ、ごめん~。手が滑っちゃった」
「も~美奈子、最低なんだけど~!!!」
「超くさいし!」
「あははははは」
ねぇ。
いったい何が楽しいの?どうして笑っていられるの?
手が滑った……?
明らかに故意だったじゃない。
唇が震えて目頭が熱くなる。
ギュッと拳を握りしめると、手のひらに爪が食い込み、痛みが走る。



