「好きにさせてもらうね?」


小声で答えた言葉はきっと宇宙君には届いていない。


だけど、それでいいの。


宇宙君との出会いがこんなにも胸を高鳴らせる。


明日が来るのが待ち遠しいと思うのはいつ以来だろう。



「あっ」


さっきまで宇宙君が座っていた場所に目を向けるとそこには黒い折り畳み傘が置いてあった。


宇宙君が忘れて行ったのかも……――。


傘を掴んで慌てて立ち上がると頬に何かがポツリと当たった。


「雨……」


空を見上げながら呟く。


ねぇ、宇宙君。


この傘、わざと置いて行ってくれたの?


そんなこと宇宙君にしか分からないはず。



だけどね、宇宙君。


あたしこの時……泣きたくなるほど嬉しかったんだ。


人の優しさって、こんなにも温かいんだね。


涙って悲しい時にだけ流れるんじゃない。


嬉しくて流れる涙もあるって……初めて知ったよ……。


あたしは折り畳み傘をギュッと胸に抱きしめて、声も出さずに涙を流した。