「ハァ……。よかった……」


カバンのそばに駆け寄って座り込み、カバンについた汚れをパンパンと手で払う。


「……ん?」


その時、目の前に黒い革靴があるのに気が付いた。


頭のてっぺんに痛いほどの視線を感じて、視線を上にあげていくと、そこには見知らぬ男の子が立っていた。



「……――あっ!!」


彼の姿に思わず声を漏らして、勢いよく立ち上がる。


「これ、あなたのでしょ?」


数分前、あたしの目の前を歩いていた男子高校生が学生カバンがひったくられた。


黒いジャンバーに、黒い目深な帽子をかぶった男は、そのまま勢いよく走り去ろうとする。


だけど、カバンをひったくられた男子高校生は何故か声をあげることも、追いかけることもしない。




『ひ、ひったくり~!!!誰かーーーーー、捕まえてーーーーー!!!』


だから、あたしが大声を上げて犯人を追いかけることになった。