あたしは汚れたお弁当箱を包みに戻して立ち上がった。


樹里はきっとここへやってくる。


職員室での出来事なんてなかったような笑顔を浮かべて。


『ごめん。遅くなったね』


って、いつものクールな姿で。


あたしに心配をかけないように。



だから、あたしはあえてここを去る。


もう、樹里と近付かないように。


大切な友達である樹里を守る為に。


自分以外の人にこんな気持ちを味あわせたくない。



苦しくて、切なくて、痛くて、張り裂けてしまいそうな思いを……――。


樹里にはもう二度と……――。


グッと唇を噛みしめて屋上の扉に向かうと、自然と涙が零れ落ちた。


あたしは涙を制服の袖で拭い、屋上のドアノブに手をかけて、気持ちを吹っ切ろうと勢いよく扉を開けた。