「理解しなくて結構……そういえば翔也に本当のことを言うタイミングを逃してしまったな」
おれはハロウィンの衣装を豊富に揃えている店で購入したシルクハットと吸血鬼の牙に見立てたシリコンの乱杭歯を口から取り外し、鉤爪のネイルチップも剥がして最後にマントを捨て、赤いTシャツとジーパン姿になる。
翔也にはハロウィンなんて知らないと嘘をついてしまった。
「最後まで吸血鬼だと言い張った理由は?」
「おれは現実の世界で笑い者だ。せめてこの世界では格好つけたかったんだ」
おれの見栄はこの世界でしか通用しない。
「面白い奴だ」
執行官は腹を上下に揺すって笑う。



