翔也は一瞬ビクッと体を震わせたが、表情に恐怖心はない。
キラキラ光る粒子がビルの屋上からモノクロの空へ舞い、つまらない配色の世界に新しい息吹を吹き込む。
「おまえは“死”でよかったんだな」
執行官は眩い景色を一言で台無しにした。
「ああ、やってくれ」
おれは翔也が粒子となって流れていった方向へ体の向きを変えた。
「柴崎浩徳、二十四歳。合計四十八人分の血液パックを盗んで飲むという奇行に及び、吸血鬼という名で世間を騒がせる。後に血液センターから出てきた車を吸血鬼の格好をして襲うが、逃走中に警官に発砲され病院へ搬送される」
執行官がおれの過去をぺらぺら喋る。嫌味の塊でできているような奴だ。



