おれは目を赤く染め、乱杭歯をむき出す。 「ねぇ、犬が怖いんでしょう」 肩の筋肉を隆起させたから後ろから見ていた男の子にはひょっとすると震えているように見えたのだろう。だが、挑発されては黙っていられない。 おまえの番まで待ってろ。 「そんなわけないだろ」 片足で軽く跳び、いまだに吠え続けている犬にぶつかる勢いで接触。 鉤形で下向きに伸びている長い爪で犬の首を掴む。 犬はおれに向かって一度「ガウッ」と牙を向けたが、敵との圧倒的な力の差に慄いて静かになる。