エレベーターがまたしても無人で動き出したことで、故障?という文字でも頭に浮かんだのか、清掃係のおばさんの手は止まっていた。
一階に降りて処置室に向かう。
翔也の生身の体は処置室から集中治療室に移されたはずで、両親に付いていった可能性が高いと思っていたが、翔也は処置室前の長椅子に座っていた。
さすがに肩を落としているが、おれの存在に気づくと弱々しくも笑顔を見せた。
「両親に付いていかなかったのか?」
ここを離れるなよ、と言っておきながら矛盾したことをつい訊いてしまった。
「話しかけても何も反応してくれないもん」



