「子供のほうが余計な知識がないから案外受け入れやすいときもある」
執行官は無表情で翔也を見た。
「これからおれ達はどうなるんだ?」
「もう少し待て……ほら来た」
救急外来の入口に一台のタクシーが停まり、三十代と思われる男女が降りた。焦っているのか何枚か千円札を投げ、運転手が「お釣り!」と叫んでも耳に届いていないらしく、駆け足で病院に入ってくる。
「お父さん!お母さん!」
翔也の悲痛な叫びで男女の正体は一目瞭然。
「き、岸谷翔也という男の子が運ばれてきたはずなんですが」
守衛室から警備員が出てきて処置室前まで付き添うと、看護師を呼ぶ。



