「そんなことくらいで吸血鬼は死なんさ」 執行官の口調は穏やかで、中指一本でクルクルと手帳を回していた。 「おれ達に何か用か?」 体を起こしながら問う。 「そんなに警戒しなくてもいい」執行官は手帳の回転をやめ、ページを捲る。「簡単な選択をしてもらうだけだ」 「選択?」 「まず、岸谷翔也君!」 執行官が学校の先生の点呼のように名前を呼ぶ。 「はい」 学校にいる感覚に陥ったのか、翔也は快活に返事した。