近づいてくると、廊下の照明が黒い影を取り除く。
「二人とも元気そうだな」
現れたのは白いタキシードを着た中年のおやじ。
「もしかしておれ達が見えるのか?」
「もちろんだ」
髪の毛が後退して額と頭の境目が曖昧で、二重顎と太い首、ポッコリ出たお腹、頭上から機械でプレスされたみたく背が低く、声は掠れて聞き取りにくい。醜さをより集めしたかのような容姿だ。
「あんたは誰だ?」
初対面のはずだが、相手はおれ達を知っているみたいな口振り。
「脳機能処理判定執行官だ」
「なに?」
聞きなれない言葉に聴覚が反応できず、訊き返す。



