「大丈夫だよ」 「二度と言わすな。やめておけ」 やや語気を強めて言ってしまう。おれはなにをそんなのに必死になっているんだ? 「ぼくには見る権利がある」 「権利?生意気なことを言うな」 眉間に深い皺を刻み、鬼の形相をつくってみる。頭からストロー刺して血吸うたろか、くらい言ってやればよかった。 「ほぉ~君にそんな人間的な心が残っているなんて思わなかったな」 声は誰もいないはずのロビーのほうから聞こえた。 黒い影が動いた。 ずっと前からロビーの椅子に座り、こちらを観察していたみたいだ。