ひょっとするとこのモノクロの世界にいるのは、おれと男の子だけかもしれない。


男の子を見た。


視線に気づいた男の子は顔を上げて微笑む。


病院までの道中、無視を貫き通してきたが、視線を合わせただけで喜ぶとは……。


「すいません」
頭を下げながら年老いた警備員がカルテを看護師に差し出す。


看護師は『遅いわね』という言葉こそ口に出さなかったが、嫌悪感を表情に出してカルテを受け取る。


警備員は早々に退散。電話交換、新患のカルテの準備などいろいろと雑用をやらされる。というなぜかおれにはそんな知識がある。