「ギャン、ギャン……」
犬が警戒心と虚勢を前面に押し出して吠える。
まるでおれの過去を知っているかのような態度。
毛は薄い白、目が小さく鼻が毛の色より際立って白い。現実の世界ではピンク系の色なのかもしれない。
シンプルな容姿に滑稽ともいえる派手な色が、顔の中心に配置されている。神の悪戯によりデザインされたブサイクな犬。
首輪もなく、野良犬と思われ、見れば見るほど哀れに思えてくる。
「目立つから吠えないでほしい」
おれが諭しても犬は距離を一定に保ちながら吠え続ける。涎を飛ばし、命懸けで吠えている。