「甘えるな」 おれはマントを掴んでいる男の子の手を軽く払い、歩き出す。 それでも男の子は背後霊のようにおれに付いてくる。 もっと強烈に拒否すればよかったと後悔しながら救急車を追いかけることにした。 『どこに搬送されたんですか?』 ガッーという雑音のあとに警察官が肩に引っ掛けている無線から声がもれてくる。 「○○○中央病院に搬送予定です」 野次馬を規制していた警察官が無線のボタンを押して答えた。 おれは余計な手間が省けて薄く笑った。