「おまえ、喉は渇いてないのか?」 「全然」 男の子は満面の笑み。 「人間は我慢強いな」 正直な感想を口にした。 「早く退けて!」 突然の怒号が十メートル先から飛んでくる。 「通れないだろ!」 見ると、救急車が野次馬の群集によっていまだに足止めされているようだ。 そうだ、血がある場所といえば……おれは本当に頭が働かないな。 「子供が乗っているんだから、早く退けてください!」 警察官が腹の底から声を出して叫ぶと、のろのろとではあるが、救急車がようやく動き出す。