ほぉ~とおれは小刻みに頷く。
モノクロの世界に赤という鮮明な色が浮かび上がった。
おれの目は白と黒しか識別できないと思っていたが、タイルに流れてきた血の色は鮮やかな赤として認識できている。
吸血鬼の特権なのか?それともモノクロに血の色だけを映えさせた不思議な空間を創りあげた神の悪戯なのか……神が存在するとして、おれが過去に仕出かしたことを考えると恩恵ではないだろう。
身を屈めた。タイルの目地にわずかに残っている赤い血が誘う。喉を潤す量に乏しくても味見したいという衝動は捨てられない。
タイルの目地に沿って人差し指をなぞり、指の腹に付いた血をアイスでも舐めるみたいにして口の中に突っ込む。



