「少しチクッとするだけだ」
精一杯の優しさを言葉として送る。
久し振りの新鮮な血を飲めると思うと、粘性の涎を唇の端からたらしてしまう。最低のエチケットのまま乱杭歯を男の子の首筋に突き立て、皮膚に刺す。
「痛いよ」
男の子の不満などお構いなしに喉を鳴らし、吸引開始。が、血がおれの口の中に入ってこない。
あのたまらく食欲をそそる錆臭いニオイが全然しない。
「まさか、おまえ……」
首筋から口を放して男の子を見詰めた。
「どうしたの?」
男の子はおれのびっくりした顔を見て、さらにびっくりしている。
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