犬が尻尾を振る姿は俺に媚を売っているとしか思えない行動に見えた。だとすると、おれに敵じゃありませんとアピールしながら去って行ったことになる。男の子が言った利口な動物という証になってしまった。
「さて、吸わせてもらおうか」
ペロッと舌なめずりをしてみる。
男の子にはまだクスクス笑う余裕があった。
「どうぞ」
男の子はブレザーを肩まで下ろし、白い首筋を露にする。
「手間がはぶけて助かる」
おれは微笑を浮かべ、男の子の肩に手をのせて屈む。
「痛っ……」
逃げないように体重をかけて掴んでしまったので、男の子は顔を歪めた。



