トータの言う通り、夏だ祭りだとテンションが上がって、慣れない格好なんかしてくるんじゃなかったかも。


けど、折角好きな人と二人で行けることになった祭りなんだから、ちょっとくらい可愛いって思われたいじゃないか。


もっとも、トータは私を可愛いだなんて思わないだろうけど。女とも、思ってないのかもしれないけど。



指と手の痛みにくわえ、汚れた浴衣を見てると、なんだか悲しくなってきた。




「……」


「……」




落ちた私の気分に気付いているのかいないのか、それ以上はトータも何も言わず微妙な空気が流れる。


……あー、もう。だめだだめだ、暗くなるな私。




自分に言い聞かせ、無理やり口の端を上げ「もうすぐ花火、上がるのかなー」なんていう当たり障りのない話題を声にしかけたとき、

「――ひやあ!」

私の意思でなくいきなり足が少し上に持ち上げられ、変な悲鳴とともに体が後ろへひっくり返りそうになった。