思っていれば、

「あーあ、折角の花火なのになー。もっと美人な彼女と見たかったわー、マジで」

からかうように言うトータ得意の憎まれ口が炸裂して、何か心臓が痛んだ。




そんなの、冗談だとは分かっていても、傷ついてしまっている自分がうざい。




「……私だって、優しい彼氏と見たかったよ。私が転ばないように手を握ってくれて、下駄の鼻緒が切れて歩けなくなった私をおぶってくれる、かっこいーい彼氏い」


「ぶっ、何それ。漫画の見すぎだな」


「……うるさい」




た、確かに、自分でもちょっとくさいなって思うけど。実際そんなことされたら恥ずかしくて死んじゃうけど。


ムッとしたまま、花火を眺めた。




「――あーあ、しょうがねえなあ」




していれば、

「え?」

いきなり私を振り返ったトータが、ずんずん歩いてきて、乱暴に私の腕をつかむ。




「え? え? ……なに?」




掴まれた右手が痛い。というよりはくすぐったい。急になに?


不可解なトータの行動に戸惑っていれば、心なしか彼の顔が火照っていることに気づいて、首をかしげた。