もちろん、葉司父に言づてを頼まれたから、という理由も、あることには、ある。
けれど、それだって、電話やメールや、書き置きなんかで済まそうと思えばできることで、それをせず、きちんとあたしの口から葉司父の思いを伝えたいと思ったから、ここにいるのだ。
強気に言うぞ、あたしは。
ので。
「悪いんだけど、あたしが話し終わるまで、葉司はしばらく黙っててくれないかな」
「ああ、うん……ごめん」
葉司にはしばらく黙っていてもらうことにし、あたしは再度、改めて、葉司父の様子や、あたしがここへ来ようと思った本当の理由、どうしてここにいるのかを話しはじめる。
最初こそ、純平の行動に苛立ったり、葉司父の言葉を信じず、いい顔はしていなかった葉司だけれど、あたしが自分で決めて葉司父に会いに行ったことや、葉司父の本心を話すと、その顔は、次第に柔らかい表情になっていった。
「だから、純平のことは責めないであげて。葉司のことを心配して、あたしに『彼女のふりをしてくれ』って頼んだだけなんだから」
「そっか。……うん、あとで礼でも言っとく」
「それがいいと思う」
「分かった。マコも、ありがとう」
「ううん」