「で、まだ姉さんの腹が出てない内に式まで済ませようって事になったらしくて。海外に赴任してる俺らの親達も戻ってくるから」


……今なんつった?


「あれ?お前、俺の親達に会ったこと無かったっけ?」


私は首をぶんぶんと横に振った。そりゃーもう勢いよく。



「蒼季のご両親って、仕事は何をしてる人達なの?」

「うちの親?両親ともデザイナー。親父は建築でお袋は造園。俺が高校を卒業してからは二人で組んで、世界中を飛び回って仕事をしてる」



思えば付き合って1年以上にもなるのに、そんな事も知らなかったなんて。てゆーか、聞かなかったし気づかなかった私も随分失礼な事してしまったよね。



あーあ、どうしよう。


デザイナーかぁ。気難しかったりするとか言う?不束者ですが…とか三つ指着いて挨拶しなきゃ怒られるかな?



「なーに悶々してんの、お前」

「だって今までご挨拶したことないんだもん……」


蒼季はくすりと笑って私の頭をよしよしと撫でてくる。だけど子供扱いにムッとした私は、蒼季の手を思いきり叩き落とした。


「なんでもっと早く言ってくんないのー?ご挨拶とかしてないじゃん!」


もしかして、蒼季は私の事をご両親には話してないとか言わないよね?いや、でも蒼季なら話してない可能性も無きにしもあらず…かも知れない!


……もしそうならマジで立ち直れない。別れてやる。


「両親ともあれから全然帰って来てねーからな。でも、姉さんから俺とお前の事は聞かされてたみたいで、お前の事は姉さん経由でちゃんと知ってるから安心しろよ」



安心した。別れなくても済みそうだ。


って問題はそこじゃなくて!



「いつ帰って来る…いらっしゃるんだよー?やっぱりちゃんとご挨拶……」


言い直した私の言葉に蒼季がぶふーっと吹き出した。