単車で学校まで連れてくると、桜空は2ーFへと小走りに走って教室の中に入った。


俺のクラスが2ーBだから、教室が離れていたのか。



桜空は机から鞄ともう一つ小さめのサブバを持ち出してきて俺の前で立ち止まった。


「タツキ、送っテくれて、ありがトウ。もうおうちに帰るネ」


にこりと笑って側を通りすぎる桜空。


おい待て。誰が一人で帰らせるなんて危ないマネすっかよ。



「だから、家まで送るって言ってんだろ?」


誰もいない校舎の中を、桜空の手を強く掴んで歩く。


夕焼けに照らされた二人の影が重なって、ゆらゆらと揺れて長く伸びている。


「……タツキ、行きたい所がアルノ。そこに行ってもイイ?」

「ああ」


桜空はハーフだと言ったが、日本に住んで長くないのか?俺が話す言葉を理解するのにも時間がかかってるし。


「お前、どこのハーフ?日本に来てまだ日が浅いのか?」

「日ガ浅い……?私ハ、フランス人のお母サンと、日本人のパパがイル。日本には、去年来たノ」

「そうか。それで、片言の日本語なんだな」



再び単車の前に来てメットを桜空に渡すと、桜空が悲しげに俺を見上げた。



「……タツキも、私の話し方にイライラすル……?」


イラつくなんてあるわけねぇだろ。


その、自分でももどかしげに一生懸命話すところさえ見ていたいんだから。