桜空を抱き上げ部屋を出て、階段を下りたところでまた春臣に捕まった。



「お前、無理矢理な事したんじゃねーの!?」


春臣が俺を見る目からはありありと軽蔑の色が窺える。



…無理矢理…にはなるか?本人に良いかどうかも聞かなかったしな。



「タツキ、この人ハ?」

「止めろ桜空、こいつを見んな。孕ませられんぞ」

「出来るか阿呆!! つか、お前!」


ああもうぎゃんぎゃん五月蝿ぇな。


「桜空、こいつは宮藤春臣だ。危ないヤツだから近寄んなよ?」


素直に頷く桜空に、自然と頬が綻ぶ。


「お前にだけは危ねーとか言われたくねーよ!! つーかマジキモい。あの鷹嘴が骨抜きとかマジでキモい。お前こそ近寄んないで」


桜空を抱き上げたまま、春臣に蹴りを入れた。


のたうち回る春臣には目もくれず、単車の後ろに桜空を乗せた。


「腰に手を回してしっかり掴まってろ」


桜空の腕が俺を包む。



夕焼けに染まる世界がこんなに生き生きとしているなんてな。


桜空といると、今生きている世界にも意味がある。



――生まれて初めて、自分の存在をすら肯定したくなった―――。