通話ボタンをピッと切った。



あたしは瞬の存在を思い出す。

少しだけ遠い距離にいる瞬は、大きく目を見開いていて


驚いた顔をしながら



「今…なんて?」


「えっ?」


瞬の言葉の意味が分からない。


「今、紗希と電話してたよな?」


「うっ…うん?」


なんだか瞬の様子がいつもと違う。

焦ったような、苦しそうなそんな顔して

知らない瞬を見たからかな?
知らない瞬があたしの目の前にいるような感覚。


遠く感じてしまう。


「………千鶴って、言ったよな?」



そんな顔で、

千鶴さんの名前を呼ぶ瞬を


あたしは知らない。