好きになった人、愛した人。

「でもさ、それって普通じゃない?」


「普通?」


「うん。奈生はかなりの美青年だよ。

矢原も負けてないけど。でも悲劇的な要素にはかける。


奈生にはさ、人には理解できない闇みたいなのがあってさ、それが魅力的に見えるんだよ」


容姿のいい可愛そうな子に、みんなは惹かれるものなんだよ。



あたしは、そう言った。


「兄として、一生懸命我慢してたつもりだったんだけどな……」


矢原の手が、テーブルの上のあたしの手を握り締めた。


突然の出来事で、固まってしまう。