そう訊ねるのを無視し、矢原はページを破ってあたしに差し出してきた。


書かれている電話番号も、携帯番号だけだ。


「ねぇ、固定電話は?」


矢原からの紹介といっても、これでは怪しすぎる。


しかし、あたしがメモから顔を上げるともうそこに矢原の姿はなく、忙しく行き来する人ごみに紛れてしまっていたのだった。