同情したような視線を感じたあと、

「なんなら、16歳の子の家庭教師してみない?」

と、話を持ちかけてきた。


「家庭教師?」


「あぁ。チハヤ、勉強得意だったろ?」


確かに、あたしは小学生の頃からもの覚えがよく、テストでは上位の成績を誇っていた。


高校1年生くらいの勉強なら、教えられる自身もあった。


「話はつけておくから、興味があったら明日の大学終わりに行ってみなよ」


そう言って、矢原は胸ポケットから黒く分厚い手帳を取り出し、一番後ろにページに相手先の電話番号と住所を書いた。


「あれ? 名前は?」