ボロボロに使い古した玩具。


それでも、矢原にとっては宝物だったと思うのに、矢原はそう言って辛そうに笑った


「でも、俺知ってたんだ。奈生がほしいのは玩具なんかじゃないって」


「え?」


「校庭を走り回ったり、友達と一緒に通学したり。そんな日常がほしかったんだと思うよ、あいつは」


その言葉に、あたしは胸が苦しくなった。


当たり前のことが、奈生には一番難しいことなのだと、思い知らされた。