明上森(あけがみもり)のなかを迷いもせずに進み、そのまま森の奥深くへ歩んだところで足を止めた。

目の前にたたずんでいるのは、猫又くんの家。


なぜこんなとこに来たのか。
なぜこんな場所を知ってるのか。
なぜ私は、…

猫又くんに会いたがっているのか。


私、【野良 涼子】(のら りょうこ)もわけがわからぬ状態ってわけだ。


確かに、『あの日以来』私はここを訪れるようになった………、というか、いつの間にか足が猫又くんの家に向かっている。

ここ最近は行ってなかったのだけれど。


『あの日』、なぜ猫又くんの家にいたのか。
その過程が思い出せない。

というか、それ以前の記憶も曖昧になっているのだ。


ビックリしたこと、嬉しいこと、悲しいこと、…その曖昧な記憶には、確かに思い出が詰まってたはず。


なのに何故か、思い出せない。