「ところで、」



アイスコーヒーをまた一口含もうとしたとき、猫又くんはオモチャを見つけた子供のように、無邪気な笑顔を私に向けた。



「あなたは本が好きですか?」



ああ、このときテンパってYESと答えなきゃよかった。

なにせ、彼は無類の本好き、
『本の虫』なのだから。



「………う、ん。本はまあ読むけど、」

「それはよかったです」

「え」



彼はキッチンの後ろにある棚に手をのばす。

本来、その棚はワイン酒などを並べるためのものだと思うけど……彼のワイン棚には、本がぎっしり詰まっていた。