(ん? あれっ、何で母さんじゃないんだろう?)


頭の中では夢だとわかっていた。


でも俺はママと呼んでいた幼かった頃に戻っていた。


(あ、何で……何で又この夢を……)


母に甘えたくなると良く見た夢。

母の胸の中でスヤスヤ寝ている自分を探す夢……


又あの夢を見ていた……




 仕事が忙しすぎて会えない母を見つけて、泣きながら追いかけた。


それでも無理やり気持ちを押さえつける。

母に負担をかけさせたくなくて……
俺は平気な振りをする。

母が時々見せる不安そうな顔。

それに応えるために……


いつの間にか母の顔色をうかがう、そんな子供になっていた。

どんなに寂しくても……
母の重荷にならないように、笑顔でいるようにしなくてはいけないと思った。


あの頃はただがむしゃらに、全てに無理をしていた。

そんな健気な姿に涙して、心を満足させようとして……
俺は今日も幼子に戻り、母の胸を求めている。


俺は見た。
あの夢の中で……
白い世界をさまよった果てに……
俺だけの母を……
やっと見つけ出したんだ。


母は俺のベッドの上で子供を抱いていた。

俺を抱いていた……


寂しさの果てにやっと見つけ出した境地。


そう……
心のより所……


俺だけが独占している母の胸……




 (わあー! ママが抱いてくれている。きっと今、ママの胸に抱かれながら眠っているんだ。そうか! ママは俺が寝た後でいつもこうやってくれていたんだ)

素直にそう思った。


だって母の胸を占領しているのは、鏡の中で目にしてる自分そのままだったから。

だからこうして一人でも耐えて来られたんだ。


まるで自制心と克己心の塊のような生活。

だからこそ、母に甘えたくなるとあの夢を見る。


「ママー。ママー」

頭の中で俺の泣き声だけがこだましていた。


白い世界の果てに……
母の愛を見つけるために……
俺は又夢を見る。


本当は怖いくせに……
飛べない翼身にまとう。


飛んで……
堕ちての繰り返し……


そしてあきらめ……
夢の中をさまよい歩く。


そして……
未だに叫び続けてる……


「ママーー!」

俺は夢の中で母を探し続けてる。

探し求めている。