祥太はボードを返してきた。
「優衣の母ちゃんの事を、周りにどう言われても聞き流せばいい。
ただ、優衣は、
優衣だけは、
母ちゃんの事を悪く言うな」
悪く……
私、『息子を殺した母親』って……
「優衣を産んでくれた母ちゃんだろ」
祥太は私をあやすかのように、頭を撫でた。
「俺にとっても、大切な人だから」
祥太は、お母さんのこと大切に思ってくれるの?
軽蔑しないの……?
「周りがどう思おうと、
俺は、そう思っている」
きっぱりと言い切った祥太が、
輝いて見えたのは、ひまわりに囲まれているせいだろうか……
祥太の言葉が嬉しくて、
温かくて、
目の奥からじんわりと涙があふれてきた。
泣き顔を見られたくなくて、ボードを抱えたまま、
祥太の胸に自分のおでこをあてた。
祥太はずっと頭を撫でてくれて、
そのままぎゅっと抱きしめてくれた。
ありがとう……祥太。
この気持ちは、
ボードに書ききれない……
もう、どうしようもなく好きだと思った。
私、祥太を好きでいていいかな……
好きでいて、
いいのかな…
祥太はそっと私の肩を押して、
顔を覗き込んできた。
「高校行く気になったか?」」
私は、少し考えてから頷いた。
「本当は高校の奴らに、見せたくないんだけどな……」
祥太は自分の髪をくしゃくしゃっとして、
くるっと向きを変えて歩き出した。
……?
どういう意味だろう……
私はボードをポーチにしまって、祥太を追いかけた。
祥太の肩を叩いて、首を傾げると、
「なんでもないよ」って、笑って……
私が、祥太の手を握ったら、
指を絡ませて繋いでくれた。