高校……
私は顔を上げた。
「いろんな奴がいるから、辛い思いするかもしれないけど、
そんな奴ばっかじゃないから。
優衣のこと、わかってくれる奴が必ずいるから。
それを教えてくれたのは、優衣だろ」
祥太は、頬から手を離した。
「優衣なら大丈夫だよ。
俺もついているから」
祥太がついていてくれる……
祥太ともっと一緒にいられる…
でも、いろんな人に会うことになる。
お母さんのこともきっと言われる。
いろいろ噂される……
きっと祥太に迷惑をかける。
『あんたの母親は、間違ってんのよ!!
自分の息子を殺した犯罪者なのよ!!
どこに行っても、
ずっとずっとあんたにつきまとうのよ!母親のことが!!
あんたは生きている限り、ずっと母親のことで苦しむのよ!!』
祥太のおかげで忘れかけていた奥野の言葉を、
今、はっきりと思い出した。
今まで、祥太と二人きりで、
祥太にだけ優しくしてもらって、
辛かったことを忘れさせてもらって、
祥太を好き……って思っていたけど、
それって、
祥太を好きになることって、
祥太に迷惑をかけることになるって、
今頃気づいた。
【祥太にいっぱい迷惑かけちゃう】
祥太は、ふっと笑った。
「迷惑なんて思わないよ」
【祥太も変な噂されちゃうかもよ】
「変な噂ってなんだよ」
【あんな女と知り合いなのかよ…とか】
祥太はちょっとムッとした。
【息子を殺した母親の娘なんだよ、私。私と一緒にいたら、迷】
書いている途中で祥太はボードを奪い、
裏面をこすって文字を消した。
「言っただろ。優衣は優衣だって。
迷惑だと思うなら、こんなに一緒にいるわけないだろ」