「約束」涙の君を【完】




隣から祥太の顔を見上げると、目が合って。


「ん?」と首を傾げるから、私はぶんぶんと首を振った。



祥太、本当に背が高くなった……




あの頃は、手を繋いでいると、私の方が引っ張っているみたいだったのに、



さっき、祥太に抱きしめられた157cmの私は、


祥太の胸の中にすっぽりおさまってしまっていた。



繋いだ手も、絡まる指も、


男らしくて……




「お兄ちゃーーん!」







……?



お兄ちゃん?



川原を歩いていたら、突然川下の方から声がした。




川下を見ると、男の子が3人ぐらい網を持って川に立っていて、


そのうちの一人が思いっきりこっちに向かって手を振っていた。



「あ、太一(たいち)だ」





たいち……?


「お兄ちゃーん!


魚獲れないよぉーー‼



お兄ちゃん来てーー‼」




「頑張れー、太一。


気合いで獲れ」



川岸まで近づいて、祥太は笑いながら言った。


「気合いじゃ、無理だろ!


お兄ちゃんやってみてよ!」





祥太は、「しょーがねーなぁ」と言いながら、ボディバッグを外した。




「悪い、これ持ってて」



そう言って渡されたバッグは、思っていたよりもずっしりと重かった。


そして祥太は水色のシャツを脱ぐと、

タンクトップ姿になった。


白いタンクトップだと思っていたけど、よく見たら淡いピンクだった。




祥太って着痩せするタイプなんだ……




肩の筋肉がこんな……









わぁっ‼



見とれていたら、頭から水色のシャツを被された。



シャツから顔を出すと、祥太は、

「それも、持ってて」って笑って……





サンダルのまま川にザブザブと入って行ってしまった。