私はゆっくりと頷いた。
祥太は、あははっと笑って下を向いた。
そしてまた私を見た。
「後ろ乗りな」
え…後ろ……?
自転車の後ろ?
私が躊躇していると、
祥太が私の腕を掴んだ。
「すぐそこだけど」
そう言ってまた笑った。
祥太の笑顔を見ると、小さい頃の祥太を思い出す。
大きな黒目がちの瞳が、笑うとくしゃってなるところが、
昔と同じ、変わらない。
私が頷くと、祥太が手を離した。
そして自転車の後ろに横座りすると、私の両腕を引っ張って自分のお腹に回した。
引っ張られるがままに、
そのまま祥太の背中にしがみつく形になってしまった。
祥太のワイシャツが私の頬にあたって、
「動くぞ」
背中から祥太の低い声が響いて来て……
なんだ……
もっと家から遠くまで歩けば良かったなんて……
ちょっとしか後ろに乗れない、
この短い距離を、
祥太の体温を感じながら、
ものすごく後悔した。



