勢い良く飛び出し、あてもなく全速力で走った。
息が苦しくて苦しくて、
足が、腕が、前に進まなくなって、
地面に手をつき、倒れこんだ。
息が苦しくて、
胸が苦しくて、
声を出すことはできないのに、
涙は勝手に出てきて、
地面にポタポタと落ちた。
生きているのが辛いのに、
必死になって動いている自分の心臓。
いっそ止まってくれたらいいのにと、
胸を抑えれば抑えるほど、
その鼓動の強さを、
痛いほど感じた。
『自分の息子を殺した犯罪者なのよ!!』
さっきから奥野の言葉が、頭の中をぐるぐると回って消すことができない。
確かに奥野の言う通り、
私は生きている限り、
お母さんの事がつきまとって、苦しむんだ。
なんでこんなことしたの!お母さん!
私は支えてあげたかったのに…
なんでよ‼
なんで、ひとりにしたんだよ‼
そう叫びたいのに、
声が出ない。
どんどん息が苦しくなって、
吸えば吸うほど、苦しくなり、
目の前にキラキラと星のようなものが見え始めた。
「ちょっと、大丈夫?」
顔を上げると知らないおばさんがいて、
背中をさすってきた。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
「大丈夫?しっかり!だいじょ……
おばさんの声がだんだん遠くなって、
目の前が真っ暗になった。



