祥太は腕についた水色のゴムを眺めて、
「わかった」とつぶやいた。
私が髪の乱れを指で直していると、
祥太が一段上って隣にきて、
私の頭を撫でた。
ずっと撫でられていたら、
泣きたくなってきてしまって、
涙がこぼれた。
「ごめん…やっぱ泣くのがまんできない。
笑ってバイバイしたかったのに……」
私は石を握ったまま、手の甲で涙を拭った。
祥太は泣き止むまでずっと、
黙って頭をなでていた。
私が落ち着いてから、手を繋いで一緒に石段を下り家に向かうと、
おじいちゃんとおばあちゃんが縁側で待っていた。
おじいちゃんが車で駅まで送ってくれることになっていて、
おばあちゃんと祥太を残して、
私は助手席に座った。
車が動きだし、窓を開け後ろを見ると、
おばあちゃんが手を振っていた。
私も思いっきり手を振った。
でも、祥太は突っ立ったままだった。
見えなくなるまでずっと手を振っていたんだけど、
結局祥太は、
一度も手を振ってはくれず、
そのまま見えなくなった。
こうして私の小学校最後の夏が、
終わった。