「約束」涙の君を【完】






祥太の照らす懐中電灯の明かりを頼りに、

夜空の下、虫の音を聞きながら、


あぜ道を川に向かって歩いた。


昼間と違って、真っ暗で少し怖かったから、


隣から祥太のタンクトップの裾を掴んだ。




すると祥太は立ち止まって、

何も言わずに、左手を差し出してきた。




私は裾から手を離して、その左手に自分の右手をのせた。


すると祥太がギュッと握ってまた、



歩き出した。




祥太に手をギュッて握られると、


いつもドキドキした。




川原に着き、


なぜか背伸びをしながら遠くを眺めて、
花火を探した。



昼間よりも川の流れる音が大きく感じた。





「見えた?」



「いや…もう少し広く見えるところまで行くか…あ……」




移動しようとした時、遠くに…本当に遠くに、


小さな丸い花火が光った。



「見えた‼祥太‼見た?今の見た?」



祥太は、笑って頷いた。




すごくすごく小さな花火だったけど、祥太と見る花火は、

ひとつひとつが大切に思えた。


帰る前にまた、


思い出がひとつ増えた。



座ってしまうと見えなくなってしまう気がして、



ずっと立ったまま遠くの花火を見つめていた。





ずっと、手をつないだまま見た小さな花火を、



ずっとずっと忘れない



そう思って繋いだ手を、


私の方からギュッとした。