8月29日。
その日はまた、お父さんが仕事で遅くなると連絡があって、
祥太も一緒に夕ご飯を食べた。
「川から花火?見えるかぁ?じいちゃんは見たことねぇなぁ」
おじいちゃんは水で薬を飲んだ。
「でも、もしかしたら見えるかもしれないから。
行ってもいい?」
おばあちゃんは、立ち上がって戸棚をゴソゴソと何かを探し始めた。
「あぁ、あったあった。
ほれ、懐中電灯持ってけ。
行ってきな。
祥太、優衣を頼むな」
おばあちゃんは、そう言って祥太に懐中電灯を渡した。
「わかった。
優衣、行こう」
「うん。ありがとうおばあちゃん」
祥太が立ち上がったから、私も立ち上がった。
「気をつけてな」
「なんだ、じいちゃんも、一緒に行くか?」
おばあちゃんは、おじいちゃんの背中を叩いて、
「年寄りは邪魔だ、気ぃ遣え」
そう、小さな声で言った。
「終わったらすぐに帰ってきな。
父ちゃんには、ばあちゃんから話しておいてやるから。
一緒にうちに帰ってきな」



