「そういえばさ、29日に隣の市で花火大会があるって父ちゃんから聞いて、
場所的に川からなら見えるかもしれないって。
まぁ、見えても小さいだろうけど…
見にい…」
「見たい‼ちっちゃくてもいい。
一緒に見ようよ!」
祥太は、ぶっと吹き出して笑った。
「わかった。一緒に見ような。
あと、一週間だな…」
「うん……」
あと、一週間。
本当に帰りたくないって思った。
本気で帰らなくてすむ方法を考えたりした。
でもいくら考えても無理だった。
お母さんのことを、私は支えてあげなくちゃいけない。
じゃあ、3人でおばあちゃんの家に引っ越してくるとか……
無理だ。
お兄ちゃんは今、専門の学校への通級指導が決まってやっと動き出したところだし、
高校のことも考えなくちゃいけない大事な時期だ。
それに、今おばあちゃんの所に引っ越したら、
もう、絶対にお父さんは帰ってこない気がする。
だからやっぱり無理だ。
私の初恋は、
あと1週間で終わるんだ。



