俺と優衣……




「秘密って、どうして?」



「勝手に鍵開けて入ったのが父ちゃんにバレると怒られるって……」


「そういうことじゃなくて。


周りの人たちにも見せた方が、


木を切っているだけじゃないって、わかってもらえるんじゃないの?」



祥太は少し考えてから首を振った。



「見せたんだ。最初。


そして、切ったことだけが一人歩きしたんだ。



だから見せれば誤解がとける訳ではないって父ちゃんがそう言ってて。




いつか、何年かかるかわからないけど、



今植えた木が成長して、


今までよりももっとすげー森林になったら、


その時やっとわかってもらえる日がくるんじゃないかって思う。






かなり時間がかかるよな…」





祥太は空を見上げた。





私も見上げると、ひまわりの黄色と、木々の緑の上に、


青空と、大きな白い入道雲。







「優衣は、わかってくれる、


わかってほしいって思ったんだ」


目線を下ろして祥太を見ると、



祥太はまだ空を見ていた。






「祥太」




私が呼ぶと、クリッとした瞳で私を見た。


祥太は少したれ目で黒目が大きいと思った。




私は小指を差し出した。




「秘密にする。今日のこと。


それから、

祥太のお父さんがやっていることは、


緑を増やしていることなんだって、



私は信じるよ」





祥太が私の小指に自分の小指を絡ませた。





「ありがとな」




「ね、今日こそとうもろこし食べに来ない?」






「え、これから?」




「だってさ…私、


ここからひとりでおばあちゃんちに帰れないもん。


道、全然わかんない」




祥太は、ぶっと吹き出して笑った。



「もしかして方向音痴か?」



「はあ?だって、目標物なんにもないじゃん!わっかんないし!」



祥太は小指を離した。





そして、腕じゃなくて、手を繋いできた。




「しょうがねーなぁ……」






そう言って短髪をぽりぽりしながら、ひまわり畑を抜け、



網にバケツを引っ掛けて肩にかけた。




そして手を繋いで元の道を二人で歩いた。



「あ、俺手汚ねえかも」




「え。」



「魚とか、虫とかガシガシ掴んでた」





「ええええええ!!!」






ちょっと虫は嫌だなって思ったけど、



離したくないって思った。




だって、

繋いだ手をギュッてしてきたから……