石段を上りながら、
小6の夏休みを思い出した。
『約束、毎日遊ぼう。
毎日、毎日毎日……
祥太に会いたい。
祥太とずっと……一緒にいたい』
『わかった、約束する』
『絶対、絶対?』
『絶対に、約束する』
石段を上がって行くと、
制服姿の優衣が見えた。
あの頃は、下を向いて泣いていたのに、
今、優衣は……
空に手を伸ばして、
瑠璃色の石をかざして、
笑っていた。
「優衣」
ずいぶん下から優衣を呼ぶと、
優衣は目線を下ろして、俺を見た。
すると、満面の笑みを浮かべ、
立ち上がった。
「おかえり!!祥太!!」
優衣は、笑顔のまま駆け下りてきた。
泣いてばかりの、
今にも壊れてしまいそうな、
優衣の心は、
もう、誰にも壊されない。
涙の君は、
強くなった。
駆け下りてきた優衣を、
ぎゅっと抱きしめた。
ずっとそばにいるという約束。
いつか必ず、その約束を叶えるために、
俺はここに、
必ずまたここに、
帰ってくるから………
〜「約束」涙の君を〜
end