高校一年 終業式





終業式の後、


クラスのみんなで、

祥太の『東京いってらっしゃい会』を、

学校から少し先のカラオケでやることになっていた。




教室からすごいテンションで、みんなカラオケへと向かった。



部屋に入ると、すごい盛り上がりで、

祥太との会話の声が、

自然と大きくなった。



「祥太は何歌うの?」


「はははっ、俺はパス」



「ええ???もしかして苦手?」




「あははははっ、超苦手」



なんだ……カラオケ苦手だったんだ。




「苦手なら苦手って言えばよかったのに。
祥太の会なんだから」




「いいんだよ。みんなが楽しんでいるのを見たかったから」




「そっか……」




祥太らしいといえば、祥太らしいけど。




確かに、祥太がマイクを持って歌うなんて……うん。想像できない。





その時、賢人くんが、マイクを持った。


「祥太ー!こっち来い!一緒に歌おうぜ!」



祥太は「ははっ」と笑って、ジュースを飲んだ。




「笑ってごまかしてんじゃねー



俺と思い出作ろうぜ!」



賢人くんは、しびれを切らして、


祥太のところまできて、



腕を引っ張った。




「なんだよ、賢人。俺は無理だって」



「無理じゃねー。マイク持つだけでもいいから、


俺の隣にこい!」





祥太は渋々立ち上がって、賢人くんの隣に行った。





賢人くんは、歌い始めた。




とても上手で、有名なバンドのラブソングだった。





これ……遠距離恋愛を歌っているのかなって、歌詞を見てそう思った。





「やべー……泣けてきた……」




「あははははっ!!!!」





賢人くんが歌いながら声を詰まらせると、



クラスのみんなが大爆笑した。



その中で、賢人くんと同じ気持ちになっていたのは、



あおいと、杏と、私と、



祥太だった。