祥太に近づくと、私は自転車から降りた。
小さな街灯の明かりに照らされた祥太は、首回りが大きく開いている白っぽいロンTに、
カーキ色のゆったりとしたズボンを履いていた。
「お疲れ」
祥太は私が持っていたハンドルの右側を、
上から握った。
「送ってくよ」
「いいよ、遅いし……悪いから」
私が首を振ると、祥太は笑った。
「遅いから送って行くんだよ。
いいから、乗りな」
祥太は両方のハンドルを握った。
……いいのかな。
私は少し考えてから、
ハンドルから手を離した。
祥太は自転車に乗ると、いつものように私の腕を引っ張った。
ぎゅっと背中に頬を寄せると、自転車はゆっくりと動き出した。
祥太の背中にくっつくと、
好きって気持ちが、いつも膨らんでくる。
ずっとこうして祥太にくっついていたいと思ってしまう。
二人で会うと、
離れたくない
ずっとそばにいてほしいって、
思ってしまう。
「優衣、明日起こして」
背中から低音の声が響いてきた。
「うん、わかった」
私はまたぎゅっと背中にくっついた。
毎日こうやって会えるのに、
もっともっと一緒にいたいと思ってしまうのは、
欲張りだろうか……
家の前に着き、私は自転車から降りて、
前かごからバッグを取り出した。
「明日、朝また迎えにくるから」
「うん。ありがと……祥太。
あ、そうだ」
私はバッグの中から、さっき作ったクッキーの袋を出した。
「これね、みんなで作ったの。
明日これを売るんだって。
一個もらったから、祥太にあげる」
祥太はハンドルから手を離して、
そっと受け取ってくれた。
「すげーな」
祥太はクッキーがたくさん入った袋を眺めた。
「私はね、ハートを型抜きしたんだよ」
私がそう言うと、祥太は袋を開けて、ハート型のクッキーを取り出した。
そして、パクッと一口で食べた。
え、今?今食べてくれたの?
祥太はしばらくもぐもぐとしていて、
その顔がかわいくて、
かわいいな……と思っていたら、
優しく目を細めた。
「うまいじゃん」
祥太はまた袋を閉じて、自転車のカゴに入れた。
「ありがとな。じゃあ……おやすみ」
祥太はハンドルを持ち、来た道を戻った。
もう、行っちゃうんだ……
最近あまり一緒にいられなくて、さみしい。
会えばこうして、別れ際がつらい。
祥太の後ろ姿が、昼間よりも早く見えなくなってしまって、
もっとさみしくなった。



