「我慢……するの?」
私が聞くと、祥太は「あはははっと」と笑って、
「できないかもしれないけど」って、
教室から出て行ってしまった。
それから文化祭の準備で放課後残る日が増え、
祥太と一緒に帰れない日が続いた。
女子たちみんなと準備することで、
みんなと少し、壁がなくなってきたような、
少し距離が縮まったような……そんな気がして、
すごく嬉しいし、楽しかった。
文化祭の準備は着々と進み、
一日目の男子中心の喫茶店と、
二日目の女子中心の喫茶店と、
同じクラスだけど、競っているような感じがした。
文化祭前日の放課後、
女子たち7名はあおいの家に集まり、
喫茶店で販売するクッキーを作る事になった。
「あおいー、オーブンの使い方わかんない」
「あー、今行く。
これは、こうやって、粉ガチャガチャってふるうやつだよ」
あおいは、とても手際が良く、
みんなあおいに教えられながら作業を進めた。
生地ができると、みんなで型抜きをした。
「優衣はハートね」
あおいに、ハートの型を渡されて、丁寧にひとつずつ型抜きをした。
「あおいっていつも麻生くんといるけど、麻生くんと付き合っているの?」
私の隣で、星の型抜きをしていた澤田さんが突然聞いてきた。
あおいは、丸の型を持って固まった。
「よくわかんない」
「えぇぇぇー‼」
「えぇぇぇー‼」
同時に驚いたのは、私と杏。
「よくわかんないって、どういう意味だよ。
あんたたちまだ付き合ってなかったの?」
杏は、天板にシートを敷いて、クッキーを並べながら続けた。
「賢人は付き合ってる気でいるんじゃないの?」
杏が聞くと、
あおいは、黙々と型を抜き始めた。
「なんとなく……返事はしたから、
やっぱ付き合ってんのかな……
でも、なんか急に彼女って言われても、
今まで友達だったから、
なんか照れ臭くて。
そんな急に変われないから」