大変……?祥太が……?




私たち女子がいる教室廊下側半分から、


窓側半分にいる男子たちの方を見ると、


窓際に立っている祥太を見つけた。







今日から冬服。


グレーのブレザー


紺色のネクタイ


私のスカートと同じ、紺色チェックのズボン




冬服姿の祥太は、


夏服よりも大人っぽく見えるのは、


少し緩めたネクタイのせいだろうか……





私に気づいて、目が合うと、


くしゃっとかわいく笑って……






「結城くんて、笑うとかわいいよね」



えっ。


ひとりの女子が祥太を見つめてそんなことを言い出した……と思ったら、


みんなして祥太を見つめ出した。



「普段は男らしくてかっこいいのに、


笑うとかわいくなるんだよね〜」


「あの笑顔は、やばいね、惚れるわ」


え、え?えぇ?



「大きな目がくしゃっとね。

笑った時に、リスっぽい前歯がちらっと見えてね。


本当にかわいい」



リ、リス??




「水沢さんが羨ましい……あの笑顔をひとり占めできるんでしょ?


いいなぁ。



私にも、ああやって笑ってほしい」



女子たちの目が、ハートに……





「あ、あの……」



そんな、見ないで欲しい……な……


女子たちの前に立ちはだかろうと、


教室の真ん中で、あたふたしていたら、



頭に手を乗せられた。





「わぁ…いいなぁ……」




隣を見上げると、祥太が私の頭に手を乗せて、首を傾げていた。




「どうした?」





どうしたって……





えっと……




「結城くん、女子たちはこの衣装着て接客するから。

水沢さんが着るの楽しみでしょ?」



祥太は衣装を見て固まった。



「当日ドキドキしちゃうと思うよ!


で、男子たちは?何喫茶?」




祥太は私の頭から手を離して、


男子たちの方を向いた。





「結城ー!言うなよ!当日まで極秘だからな!」





男子の実行委員が釘を刺した。





「まぁ……そういうことだ」


祥太は、下を向いて笑った。




「なんでよー!教えてよ!」



女子たちが男子たちのエリアに、ズカズカと侵入すると、



男子たちは紙などをゴソゴソとまとめて隠し出した。









「あの服、優衣も着るの?」





祥太は笑いながら聞いてきた。



「そうみたいだね……みんな着るし。


私……クラスの一員って認めてもらえたような気がして。


頑張ろうって思ってる」



私は祥太を見上げて笑った。




祥太はまた私の頭をポンポンとして、





「じゃあ……我慢するよ、俺」